不登校と卒業アルバム〜買う?撮影は?業者目線で考える〜
アルバムの編集作業に追われている一業者sabi-seijiです。
中学3年生のワシャ子さんは、少しずつ学校へ向かうことができるようになり、お昼前には教室へ入れるようになっています。ただ、学校の見えない壁は未だ感じるらしく「見た目は白くて明るい監獄」(校舎が白いため)と表現しています。
freestocks-photosによるPixabayからの画像
令和の卒業アルバム事情
かつて私が学生だった昭和の時代、卒業アルバムは学校から業者へ生徒人数分注文されていました。そう、無条件で全員購入だったのです。
ところが近年、島の学校でも不登校の子が増えてきました。となると、
「わが子が写っていないのに、バカ高い卒業アルバムを買う必要はあるの?」
という意見が出てくるのです。
同じ保護者として、ごもっともな意見だと思います。
卒業アルバムはどうして高額なの?
・プロカメラマンによる年間を通した撮影が必要
・少人数になるほど少ロットとなり、印刷単価が上がる
・1冊でも100冊でも編集の手間は変わらないから
・年月に耐えられる製本のため
というのが主な理由です。
まず、撮影をプロが請け負う場合、撮影スケジュールは業者の自由にはなりませんし、運動会や修学旅行など長時間におよぶ撮影が多く、それだけ人件費がかかります。
卒業アルバムの注文冊数は少子化に伴って減少の一途をたどっています。
次に、印刷代金は注文冊数によって変わってきます。これは、ロットによって印刷方法が変わるためです。
最後に、編集にかかる経費の問題です。その手間は冊数に関係なく、写真の選定に始まり、配置やデザインなど、パソコンを使った作業になります。写真の選定は、写っている子供に偏りがないよう注意しなくてはなりませんし、場合によっては修正が必要になる場合もあります。
デザインに合わせたレイアウトを選択したり、文字を入れ込んだりといった作業の後、データの入稿という手順で行います。
卒業アルバムを安く作りたい場合、撮影の部分や編集作業を学校や保護者会で行い、印刷のみ業者に注文する方法があります。
しかし、一度でもその役を引き受けたことのある人ならばわかることですが、編集作業はとても手間のかかる作業である上、
・写っている枚数が少ない
・写真の表情が気に入らない
と言った苦情やトラブルにも対処しなくてはいけません。
そうしたアルバムにかかる必要経費を人数割にすると、必然的に注文が少ないほど割高になるのです。ゆえに1学年が数百人のマンモス校はさておき、おおむね高額。
業者さんを交えて相談するのがベスト
島の写真館であるわが家の場合、娘が不登校ということもあり、できる限り柔軟に対応しています。例えば、個人写真撮影については、
・個人写真撮影は学校ではなく、お店に出向いてもらう
・お店に来られない場合、出張撮影もOK
・制服を着ることに抵抗がある場合、要望があれば合成も
お子さんの心の状態に応じて、どういった状況ならば撮影OKか?といったことを1番に考えています。
最近多いのが、
「デジタルだから簡単に合成できるでしょう?集合写真は欠席者枠(写真の右上に作る四角い枠)じゃなくて合成できるんじゃないですか?」
という相談です。このことに関しては、できなくはないけれど、できればしたくない。というのが本音です。
いちから創り出す画像とは違い、既存の画像に自然な形で、人間をはめ込むためには、撮影する際、はめ込みをするベストな立ち位置や天候、光のあたり具合、影の入り具合など、細かな条件を想定してそろえる必要があるからです。
想像する以上に大変な作業とご理解ください。その上で、料金の範囲内で合成しましょうか?と提案する、きとくな業者さんもおりますので、ご相談くださればと思います。
また、「休みがちだけれど、行事によっては参加できていたため購入したい」といった方には、
・参加できた行事の写真を多めに載せることで、アルバム全体に掲載される写真点数を調整する
といった対応もしています。
しかしこれも、少人数で子供たちの顔を見知っている島の学校と写真館であることからできる対応ですので、一般的ではないかもしれません。
しかし、まずは業者を交えての相談をしてみることをおすすめいたします。学校の先生の中には「みんなで」という思いが強い先生もいらっしゃることから、業者さんにできること、できないことを直接聞いてみるのも、ひとつの方法ではないでしょうか。
ちなみに業者である家に生まれたワシャ子は、親の手前もあり、アルバムに使う写真撮影や主だった行事には極力参加してくれています。
まとめ ぶっちゃけ、わが子の写っていない高額な卒業アルバムを購入する必要ある?
業者の私が言うのもなんですが、まったく学校へ向かえていない場合、購入の必要はないのでは?と思います。
買っていただけるとありがたくはありますが…
卒業アルバムを見て、悲しくなったり、虚しくなるくらいなら購入しなくても良いと個人に思います。目にすることで心身に影響が出てしまうことは、作製業者としても本意ではありません。その分、美味しいもの食べたり、元気が出ることにお金を使う方がよっぽど有効です。
撮影をどうする?
購入は ?
といった圧を、学校の先生から感じた方もいるかもしれません。アルバムの写真撮影は締め切りもあることから、長く待てない場合があります。
最高学年になる前に親子で話し合い、新学年が始まる時には購入予定を担任の先生にお伝えしておくと良いと思います。
購入しないことを選択した場合、
・個人写真のページ用の写真撮影をする(載せる)かどうか
・集合写真や行事ページに写っている場合、掲載を了承するかどうか
・卒業アルバムを配布する方法やタイミングをどうするか
(卒業式の後、ホームルームなどで配布することが多いため、式には出席したけれどアルバムは購入していないといった場合、配慮が必要なことがあります。)
といったことも合わせて相談しておきましょう。
高校卒業前に不登校になってしまい、アルバムを購入しないことを決めた子が、数年後に「アルバムが欲しい」と問い合わせてきたこともありました。
卒業アルバムには個人情報が詰まっているため、アルバムの在庫はないのですが、せっかく勇気を出して連絡してきたくれた彼女のため、お店保存用のアルバムを譲ったことがあります。
理由をたずねたところ、
「卒業後に出会ったバンド仲間と学校の話になった時、自分の在籍していた学校を説明するのに困ったから。」(立地が島ということでインパクトが強いらしく、手っ取り早く写真を見せて言われることが多いらしい。)
とのことでした。
アルバムを開いて、懐かしく思ったり、喜んでくれると作製した側も嬉しいものです。
とはいえ、思い出は子供自身のもの。外野はとやかく言わないよう、業者さんは子供たちの判断を見守り、尊重したいと思います。